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2022年2月号

レディーミクストコンクリートの種類について

JISマークを付すことのできるコンクリートの種類が増えていることを皆様はご存じでしょうか。2019年3月のJIS A 5308(レディーミクストコンクリート)改正により,普通コンクリートにスランプフローで管理するコンクリートが追加されたのを始め,高強度コンクリートではスランプフローと呼び強度の区分の充実化が図られています。本稿では2017年12月に紹介した『生コンクリートのJIS(日本工業規格)について』を補足する形で,生産性向上並びに酷暑期に対応した暑中コンクリートの標準化をすすめる生コンクリート工場の現状について簡単に紹介します。

執筆者:情報コミュニケーション委員会 委員
氏名 西本洋一(全国生コンクリート工業組合連合会)


レディーミクストコンクリートの種類

コンクリートの種類は,2017年12月に紹介した『生コンクリートのJIS(日本工業規格)について注1と同様,表-1に示す4種から変更ありませんが,粗骨材の最大寸法(Gmax)20,25mmの普通コンクリート及び高強度コンクリートは,表-2,表-3に示すとおり,呼び強度とスランプ,スランプフロー注2の組合せの充実が図られ,JISマークを付すことのできる種類が,普通コンクリートで19種類,高強度コンクリートでは70種類増えています。(追加されたスランプ及びスランプフロー・区分:太字

表-1 レディーミクストコンクリートの種類
普通コンクリート 呼び強度18~45(N/mm2)までのコンクリート
高強度コンクリート 普通コンクリートよりも強度が高いコンクリート(呼び強度60(N/mm2)まで)
強度が高い分,部材断面を小さくすることができるため,建築分野では居住空間を広くとることができます。
軽量コンクリート 骨材の全部または一部に人工軽量骨材を用いて,普通コンクリートよりも軽量化したコンクリート
舗装コンクリート注3 すりへり抵抗性や疲労抵抗性が高い等,舗装に適したコンクリート
表-2 レディーミクストコンクリート(JIS A 5308:2019普通コンクリート・Gmax20,25)の区分1)
スランプ及び
スランプフロー
cm
呼び強度
18 21 24 27 30 33 36 40 42 45
8,10,12,15,18
21
45*)
50*)
55*)
60*)

*)スランプフローの値

表-3 レディーミクストコンクリート(JIS A 5308:2019高強度コンクリート・Gmax20,25)の区分1)
スランプ及び
スランプフロー
cm
呼び強度
46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60
12,15,18,21
45*)
50*)
55*)
60*)

*)スランプフローの値


レディーミクストコンクリートの種類が増えた背景

■普通コンクリートに“スランプフローで管理するコンクリート”を追加した背景3)
労働時間短縮,人手不足を背景とした生産性向上に対応できるレディーミクストコンクリート規格とするため,2019年3月にJIS A 5308の改正が行われています。
規格改正から2年が経過し,生コンクリート協同組合として組合工場に流動性の高いスランプフローで管理するコンクリートの標準化をすすめる動きもでてきており,施工性の改善(流動性が高まったことによる打込み作業の合理化,高密度な配筋のコンクリート構造物の充填性の改善,施工時間の短縮等)により,昨今話題の環境負荷(施工機械由来のCO2排出量)の低減にもつながっています。
なお,呼び強度の指定にあたっては,表-4に示すとおり,日本建築学会『建築工事標準仕様書JASS5鉄筋コンクリート工事 2018』による“構造体コンクリートの圧縮強度の判定基準”がJIS A 5308:2019の“強度”の考え方とは異なることから,呼び強度≠調合管理強度である点に注意が必要となります。

表-4 JASS5 2018:構造体コンクリートの圧縮強度の判定基準とJIS A 5308:2019:強度の考え方
建築工事標準仕様書JASS5鉄筋コンクリート工事 2018:構造体コンクリートの圧縮強度の判定基準
標準養生した供試体の1回の試験結果 → 調合管理強度以上で合格
(適当な間隔をおいた3台の運搬車から1個ずつ採取した合計3個の供試体)
JIS A 5308:2019(レディーミクストコンクリート):強度
標準養生した供試体の1回の試験結果 → 呼び強度の85%以上で合格
標準養生した供試体の3回の試験結果 → 呼び強度以上で合格

■高強度コンクリートの呼び強度の種類を多くした背景3)
従来の規格は,呼び強度とスランプフローの組合せが少なく,建築分野の購入者の要求を満たしていなかったことから,2019年3月にJIS A 5308の改正が行われています。改正から2年が経過し,高強度コンクリートの標準化をすすめる生コンクリート工場が増えるにつれ,購入者は1N/mm2単位で呼び強度を指定できるようになってきており,国土交通大臣認定MCON注4の適用範囲と重複しない建築分野での利用推進につながっています。


酷暑期に対応した暑中コンクリート

2019年7月,日本建築学会より『暑中コンクリートの施工指針・同解説(第3版)』4)がおよそ20年ぶりに出版され,コンクリート温度が35℃を超える場合に施工可能な酷暑期注5に対応した暑中コンクリートの製造に関する技術資料の整備手法が示されたことを受け,試験データを整備し,JISマークを付して出荷することのできるコンクリート温度の上限を35℃から38℃に引き上げる生コンクリート工場が増えてきています。通常のコンクリートと配(調)合で大きく異なる点は,コンクリートの目標スランプは21cmを原則とすることと,化学混和剤には高性能AE減水剤(遅延形)注6を原則使用する点の2点があげられます。


さいごに

JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)は,最近では5年毎に改正が行われており,次回改正は2024年3月になります。環境配慮や品質・性能の多様化への対応,検査の合理化による生産性の向上や迅速かつ合理的な情報提供の推進など,社会環境の変化に対応した規格改正が行われる予定となっています。

コラム:コンクリートのひび割れ アレコレ
鉄筋コンクリート構造物(のコンクリート)にひび割れが発生することがあります。しかしながら,コンクリートの構成材料(セメント・骨材・水・混和材)に異常が生じてでもいない限り,生コンクリート工場が定期的に作製,工場内で保管しているコンクリート供試体にひび割れが発生することはありません。では,何故,鉄筋コンクリート構造物の場合,ひび割れが発生することがあるのでしょうか。
その答えの一つに,供試体は形状が小さく,無筋であるということがあげられますが,ひび割れが発生する本質はそれではありません。残念ながらコンクリートには,圧縮強度に比べ,曲げ強度・引張強度が小さいという特性(弱点)があります。コンクリート自体の引張強度が小さいが故,様々な要因によりコンクリート内部に発生する引張応力度が,その時点でコンクリートが有している引張強度より大きくなると,力学的にひび割れてしまうのです。仮に,圧縮強度と同程度の引張強度を発現するコンクリートが開発されれば,様々な要因により引張応力を受けたとしても,ひび割れが生じにくくなります。将来,圧縮強度と同程度の引張強度を発現するコンクリートが開発されたら,とんでもない構造物が建築されて面白いだろうなと夢見ています。


注1:日本工業規格は,2019年7月の法改正により,日本産業規格に名称が変更となっています(経済産業省Webサイト)。 本文に戻る

注2:スランプフロー2)とは,フレッシュコンクリートの流動性を示す指標の一つで,スランプコーンを引き上げた後の,試料の広がりを直径で表しています。 本文に戻る

写真-1 スランプフロー試験 img
写真-1 スランプフロー試験

注3:JIS A 5308の認証区分には含まれませんが,打込み翌日に交通開放が可能な1DAYPAVEというコンクリート舗装もあります(セメント協会Webサイト。PDFファイル)。コンクリート舗装については,「コンクリート舗装の今」(2016年4月号)もご参照いただけると幸いです。 本文に戻る

注4:国土交通大臣認定MCONとは,建築基準法第37条第二号に該当し,国土交通大臣が認定した高強度コンクリート(設計基準強度で100N/mm2を超えるものもあります)等を指します。 本文に戻る

注5:酷暑期とは,「日平均気温の日別平滑値が28.0℃を超える期間及び最新の気象情報などからコンクリート温度が35℃を超えると予測された日」と『暑中コンクリートの施工指針・同解説』に記載があります。 本文に戻る

注6:化学混和剤については,以下のバックナンバーもご参照いただけると幸いです。
混和剤について」(2015年12月号)
コンクリートの機能を向上させる化学混和剤 —高性能AE減水剤—」(2020年6月号) 本文に戻る

[参考文献]
1)日本規格協会:JIS A 5308:2019レディーミクストコンクリート
2)日本規格協会:JIS A 0203:2019コンクリート用語
3)日本規格協会・全国生コンクリート工業組合連合会:JIS A 5308レディーミクストコンクリート改正説明会テキスト,平成31年1・2月
4)日本建築学会:暑中コンクリートの施工指針・同解説(第3版),2019.7

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