日本コンクリート工学会

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2016年4月号

1.コンクリート製品の本質的優位性

 物づくりの進歩は、手作業から機械化へ、現場製造から工場生産のプレハブ化・プレキャスト化が歴史の流れですから、コンクリート構造物の構築もこの方向で発展するでしょう。このような製造方式の変化は人為的な品質変動を抑え、高性能化と経済性が達成されることになります。

同一形状部材の大量生産(工業製品化) img(1)同一形状部材の大量生産(工業製品化)
構造物の構築で同一形状の部材を大量に必要とする場合、工業製品化する方が、高品質の部材を経済的に製造することができます。道路側溝、地先・境界ブロック、電気・通信用ポール、杭、上下水道の管路など、多数の規格化された製品があります。

(2)製品購入が経済的
コンクリート工が主体でない土工とアスファルト工の道路建設などでは、舗装ブロック、側溝、歩車道境界ブロックなどのコンクリート製品を利用しています。自前で施工するよりも製品として購入するほうが効率的、経済的です。また、RCD(Roller Compacted Concrete Dam)工法のダムにおける監査路の構築は、アーチカルバート等の製品を利用する方が効率的ですi。農業の潅漑用製品や漁業の魚礁類もこれにあたります。

アスファルト舗装における境界ブロック img
アスファルト舗装における境界ブロック
道路用側溝施工の例 img
道路用側溝施工の例
ダム監査廊の例(富山県 宇奈月ダム) img
ダム監査廊の例(富山県 宇奈月ダム)ii

(3)施工システムとしての製品
コンクリート製品が施工システムの一部として位置付けられ、その製品がなければ成り立たない工法等があります。例えば下水道等の推進管、都市トンネル等のシールドセグメントインターロッキングブロック舗装、盛土のアーチカルバートなど構造物構築の工法として、プレキャストコンクリート製品を前提としたものです。

(4)モジュール化による施工性
建設現場によって工期、騒音、振動、搬入路、美観など様々な厳しい施工条件が課せられ現場におけるコンクリート施工は、リスクを伴うとともに高コストとなる傾向にあります。構造物を適切なコンクリート部材(製品)にモジュール化し、建設現場で組立て、設置することによって、構造信頼性、経済性を高めることができます。供用中の軌道の下に道路を作るためのボックスカルバート、狭い路地などに水槽を設置する潜函式防火水槽、プレキャスト部材の自重を利用した施工事例を下記に挙げます。

①鉄道運行時間外、限られた空間における道路用分割式ボックスカルバート施工例
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②住宅街の狭い路地に設置する分割潜函式防火水槽の例
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③プレキャスト部材(壁)の自重を利用して屋根を持ち上げる施工の例
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(5)施工の制約条件の解決

現場打ちによる工事
工事に長い時間がかかるので渋滞が発生するため、CO2排出量が多くなります。
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コンクリート製品を使った工事
早く交通規制をとけるので渋滞が少なくてすみます。
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①環境保全・維持
コンクリート製品は完成品を建設現場に据え付けるだけなので、天候に左右されにくく、工事期間短縮、工事作業の簡略化などによって、交通渋滞抑制、およびそれに伴うCO2削減iii iv、特に夜間施工の作業騒音減等により、生活環境、地球環境に貢献します。
②熟練作業員の不足
現場の作業員不足を、工場製品を活用することで補うことができます。
③工期
コンクリート製品の使用によって、現場における養生期間が不要になることによって、現場施工の時間を短縮することができます。
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生コンクリートが供給困難な山中にコンクリート製品を設置した例
④コンクリート現場施工が厳しい条件での施工
積雪期、寒冷地、暑中などの天候の影響や、急傾斜地、海岸、水中、深海などの施工が厳しい現場、供用中の鉄道、道路、空港などの時間的制約が厳しい現場、また生コンクリートが供給困難な現場では、コンクリート製品で施工することにより、構造物の品質信頼性を高めることができます。

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