日本コンクリート工学会

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会誌「コンクリート工学」

コンクリート工学 Vol.62, No.8
2024年8月号

目次

巻頭言
会長を拝命して
前川宏一
TOPICS
旧千葉大学医学部本館(元千葉医科大学附属病院)
頴原澄子
解説
日本建築学会「建物の火害診断および補修・補強方法指針・同解説 2024」について
𠮷田正友・近藤史朗・高橋晃一郎・春畑仁一・阪口明弘
概要:
本建築学会は、火災を受けた建物の火害診断と補修・補強において考慮すべき事項ならびに標準的な方法を示すことを目的として、2015年2月に「建物の火害診断および補修・補強方法指針・同解説」を発刊した。その後、調査方法や加熱履歴後データの充実等を経て、2024年2月に改定版を発刊した。本稿は、鉄筋コンクリート造建物に関する部分を中心に、改定版の概要をまとめたものである。
キーワード:
火害調査、火害等級、被災度、火害診断、受熱温度、補修、鉄筋コンクリート
テクニカルレポート
機械学習を用いた漏洩磁束法によるコンクリート部材中の鋼材破断検知手法の開発
林和彦
概要:
鉄筋コンクリートおよびプレストレストコンクリート橋梁の鋼材の内部破断を検知する技術のひとつとして漏洩磁束法がある。機械学習を用いた判定をするにあたり、鋼材破断の有無を判別するためのデータの種類と数を増やす必要がある。教師データとなる実際に鋼材破断を有する構造物のデータを増やすために室内でモックアップを作成し、測定に影響を及ぼすパラメータを確認した。実験パラメータは、軸方向鋼材およびスターラップのかぶり、軸方向鋼材の水平および鉛直方向のあき、破断面の距離、軸方向鋼材の水平配置本数、スターラップの配置間隔、とした。実構造物と室内試験体を合わせて得られた754データを用いて機械学習を適用した。
キーワード:
鋼材破断、漏洩磁束法、機械学習、橋梁の老朽化、非破壊試験
亜鉛めっき鉄筋の道路橋PC床版への適用
審良善和・古川耕平・菊川美仁・村上慶弘
概要:
亜鉛めっき鉄筋は、コンクリート構造物に用いられる防食鉄筋の一つである。2019年に土木学会において「亜鉛めっき鉄筋を用いるコンクリート構造物の設計施工指針(案)」が改訂され、性能照査型の設計手法が示された。これを受けて土木構造物への適用事例は増加傾向にある。本稿では、亜鉛めっき鉄筋のプレキャストPC床版への適用事例を紹介し、また適用にあたり検討した内容について報告する。その結果、亜鉛めっき鉄筋の品質は設計値を満足し、異種金属接触腐食に関しても一般大気のような乾燥環境であれば影響は小さいことを確認した。また、PC床版の施工においては、めっき補修を除くと普通の鉄筋と同程度の作業性を有していることを確認した。
キーワード:
亜鉛めっき鉄筋、プレキャストPC床版、防食、塩害、維持管理
コンクリートの強度の抜取り検査における合否判定係数の推移
辻幸和・鈴木康範
概要:
本稿では、コンクリートの強度の抜取り検査方法における合否判定基準の経緯について、土木学会コンクリート標準示方書とJIS A 5308を例に採り報告する。そして、JIS Z 9003およびJIS Z 9004により標準偏差が既知の場合および未知の場合について、昭和61年制定の土木学会コンクリート標準示方書と現行のJIS A 5308の強度判定条件に計量抜取り検査を適用した場合の合否判定係数の比較を行った計算結果についても報告する。
キーワード:
コンクリートの強度、抜取り検査方法、土木学会コンクリート標準示方書、JIS A 5308、合否判定係数
工事・プロジェクト記録
鉄筋コンクリートによりインクルーシブな空間を創出した茨木市文化・子育て複合施設「おにクル」の設計・施工
吉村純哉・田中健嗣・赤堀巧・平野敦志
概要:
本稿で紹介する建物は、大阪府北部の中核都市に誕生した新しい公共複合施設である。フラットスラブ架構を緑地に面して積層することで、立体的な公園というコンセプトを強調した。躯体による気積の大きな空間をもとに、高い自由度を有しながら市民の個々のニーズに寄り添うインクルーシブな建築となっている。開放的な空間を創出したフラットスラブ、円柱、プレストレストコンクリート梁、空間に多様性を持たせる点在した耐震壁、アートのキャンバスとなる巨大な外壁、半球形および有機的な形状の躯体の実現など鉄筋コンクリートに関する様々な工夫を紹介する。
キーワード:
フラットスラブ、高強度コンクリート、プレストレストコンクリート、サイトプレキャスト工法、免震
短繊維を添加した締固めが必要な高流動コンクリートの二次覆工への適用 —熊本57号 滝室坂トンネル東新設(二期)工事—
臼井達哉・古賀野洋貴・久保田直生・永松寿隆
概要:
熊本57号 滝室坂トンネル東新設(二期)工事では、降雨による地下水位上昇に伴う水圧の作用を考慮し、支保パターンE断面の一部において、複鉄筋断面の覆工へ設計変更となった。そのため、一般的な覆工で用いられるスランプ15-18cmでは、打込み、棒状バイブレータによる締固め作業および確実な充塡が困難であることから締固めを必要とする高流動コンクリートを適用することとした。また、このコンクリートは、曲げ靭性を確保するために短繊維を添加したものである。本稿では、流動性実験、模擬部材実験をもとにした高流動コンクリートの配合選定のプロセス、セントル型枠の設計耐力の設定、実施工における品質管理の概要について報告する。
キーワード:
高流動コンクリート、短繊維補強、トンネル覆工、側圧、型枠バイブレータ、スランプフローの全数管理
熊本地震時の大規模斜面災害復旧に新規開発した高品質のり枠工法を適用した事例と得られた教訓
佐丸雄治・別府正顕・荒木豪・福嶋啓司
概要:
2016年の熊本地震では構造物損壊や斜面崩壊が発生した。崩壊斜面の復旧にのり枠工は不可欠な技術である。しかし、従来のエアのみで輸送されるのり枠の施工範囲はホース延長で100m、打込み高さは45m以内、設計基準強度f’ck=18N/mm2と規定されている。本稿は配管延長420m揚程228.9mという難度の高い施工条件の大規模斜面災害復旧工事において、著者らが開発した長距離・高所でのf’ck=42N/mm2も可能という高品質のり枠工法を適用した事例を紹介する。課題対応では冬期低温施工、作業員不足下の工程短縮を示すとともに、難度の高いのり枠工の迅速施工が可能な対策工の例示、得られた教訓を述べる。
キーワード:
大規模斜面崩壊、ポンプ圧送エア併用のり枠工法、寒中コンクリート、作業員不足対応
講座
コンクリート構造物の美観 (3)コンクリート構造物のエイジング
橘高義典
レビュー論文(文献調査委員会)
廃コンクリートを原料とする炭酸化再生微粉と炭酸化再生骨材に関する研究動向
西岡由紀子
随筆
耐用年数
小川武史
海外だより
フィリピンインフラ整備事業の紹介
グエン ホークアン
国際情報
ACI 2024年春期会議に参加して
松家武樹
さろん
高校野球の思い出
田村隆弘
コンクリート技士のページ
「自然との調和を求めて 」新しい時代の新しい技術
金城裕二
効率的な自己投資から得られるベネフィット
古曾尾誠也
コンクリート診断士のページ
コンクリートと私の軌跡
中野愛
教える側の研鑽(リカレント教育)
入江正樹
我が職場
存続の危機!徳山高専 コンクリート工学研究室
温品達也
日本の社会インフラを支える極東興和(株)
風川喜彦

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