日本コンクリート工学会

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コンクリートの基礎知識

混和剤

 一般に用いられている混和剤は、次のように大別し分類することができる。

 i) 独立した微細な空気泡を連行することにより、コンクリートのワーカビリティー耐凍害性などを改善させるもの(AE剤

 ii) セメントに対する分散作用により流動性の改善あるいは強度を増大するもの(減水剤、AE減水剤高性能減水剤高性能AE減水剤流動化剤

 iii) 凝結時間および硬化時間を調節するもの(硬化促進剤、凝結遅延剤、急結剤)

 iv) 防水効果を与えるもの(防水剤)

 v) 空気泡の作用により充填性を改善したり、質量を軽減するもの(起泡剤、発泡剤)

 vi) その他(鉄筋コンクリート用防せい剤、水中不分離性混和剤、保水剤、乾燥収縮低減剤、分離低減剤(増粘剤)、防凍・耐寒剤など)

AE剤

 AE剤(Air Entraining Agent:空気連行剤)は、コンクリート中に多くの独立した微細な空気泡(エントレインドエア)を一様に連行し、ワーカビリティーおよび耐凍害性を向上させるために用いる界面活性剤の一種である。

 界面活性剤は水溶液中の電離性によって、陰イオン系、陽イオン系、非イオン系および両性系に分類されるが、市販されているAE剤は、樹脂系、アルキルベンゼンスルホン酸系、高級アルコールエステル系などの陰イオン系のものと、非イオン系のものに限られている。

  連行空気泡は、コンクリート中であたかもボールベアリングのような作用をするので、ワーカビリティーが改善され、所要のコンシステンシーを得るための単位水量を減少させることができる。 この結果、同じスランプのコンクリートに比較して、ブリーディングなどの材料分離が少なくなる。

 コンクリート中に連行空気泡が適当量存在すると、自由水の凍結による大きな膨張圧を緩和する働きをし、また、自由水の移動を可能にするため、凍結融解の繰返し作用に対する抵抗性(耐凍害性)が著しく増大する。この効果は、コンクリート中に存在する空気泡の粒径とその分布状態によって著しく相違する。良質なAE剤を用いた場合、直径30~250 pmのものが大部分を占め、コンクリート1 m3中に数千億個の空気泡が含まれる。

減水剤・AE減水剤

一般にセメントが水と接すると、多くのセメント粒子は互いに凝集し、集塊となってセメントペースト中に存在する。これに減水剤を添加すると、その分子が集塊状態のセメント粒子の界面に吸着し、静電気的な反発作用によりセメント粒子は個々に分散され、セメントペーストの流動性が増大する。

 減水剤は、界面活性作用のうちセメント粒子に対する分散作用が特に顕著であり、これによりコンクリートのワーカビリティーが向上し、所要のコンシステンシーおよび強度を得るのに必要な単位水量および単位セメント量を減少させることができる。

 AE減水剤は、セメント分散作用と空気連行作用を併有する混和剤で、空気泡の連行、単位水量の減少およびセメントの水和効率増大の総合効果が期待できる。

 減水剤・AE減水剤は、ポリオール複合体、リグニンスルホン酸塩ならびにその誘導体、オキシカルボン酸塩などを主成分とするものが多く、ほとんどが陰イオン系界面活性剤に属するものである。

高性能減水剤

高性能減水剤は平成17年度の改正でJIS A 6204に加えられた。高性能減水剤は「コンシステンシーに影響することなく単位水量を大幅に減少させるか、又は単位水量に影響することなくスランプを大幅に増加させる化学混和剤」と定義され、減水剤よりも高い品質の性能基準が定められている。

 高性能減水剤の主成分は、従来のアルキルアリルスルホン酸塩(ナフタリンスルホン酸塩)やメラミンスルホン酸塩の他に、最近、ポリカルボン酸系に分類される混和剤も使用されている4)。

 高性能減水剤は、使用量を増加することにより減水性が向上するが、使用量を増加しても過剰な空気連行性や異常な凝結の遅延性が少ないため、単位水量を大幅に減少することができ、その結果、高強度コンクリートの製造が比較的容易に可能となる。

高性能AE減水剤

 高性能AE減水剤は、高い減水性能と優れたスランプ保持性能を有する混和剤であり、一般の強度のコンクリートから高強度コンクリートや高流動コンクリートまで、幅広く使用されている。高性能AE減水剤の主成分は、便宜上、ポリカルボン酸系、ナフタリン系、アミノスルホン酸系およびメラミン系の4種類に分類されている。

 高性能AE減水剤の分散機構は、一般的に静電反発力と立体障害効果で説明されている。静電反発力は、減水剤がセメント粒子に吸着するとセメント粒子表面に帯電層が生じ、粒子が互いに反発することによりセメントペーストの流動性が大きくなることで説明される。その静電反発力の大きさは、ゼータ電位(ジータ電位ともいう)と相関関係にあり、ナフタリンスルホン酸塩やメラミンスルホン酸塩は、ゼータ電位が高く分散性が大きいと説明されている。一方、ゼータ電位が比較的小さいにもかかわらず高い分散性が得られるポリカルボン酸系の高性能AE減水剤の分散機構は、帯電層による反発力だけでは説明できないため、粒子間の静電反発力に加え、吸着層の立体障害効果によるものと考えられている。

高性能AE減水剤のスランプ保持機能は、セメント分散剤とスランプ保持剤を配合した剤およびそれ自身がセメント分散性とスランプ保持性を持つ剤の2つのタイプに分けることができる。前者は、時間の経過とともに溶液中の反応性高分子がセメント表面に吸着し、再凝集を防止すると考えられており、後者は、立体的にセメント表面に吸着し、長時間にわたりセメントの再凝集を防止すると考えられている。

流動化剤

 あらかじめ練り混ぜられたコンクリートにあとから分散剤を添加するとセメントの分散効果が増大する。流動化コンクリートは、この原理を巧みに利用したものであり、空気量が過大に増加しない高性能減水剤を主成分としている。

 流動化剤は2005年度の改正でJIS A 6204に加えられた。流動化剤は「あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに添加し、これをかくはんすることによって、その流動性を増大させることを主たる目的とする化学混和剤」と定義され、土木学会規準ならびにJASS 5 T-402と同様の性能基準が定められている。

凝結遅延剤

凝結遅延剤は、コンクリートの凝結や初期硬化の遅延を目的とするものである。リグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩などを主成分とし、減水剤、AE減水剤、流動化剤ならびに高性能AE減水剤の遅延形のほかに、珪弗化物を主成分とし遅延作用だけを有する凝結遅延剤、従来よりも長時間の凝結遅延を目的としたオキシカルボン酸塩を主成分とする凝結遅延剤がある。

 リグニンスルホン酸塩やオキシカルボン酸塩は、セメント粒子表面に吸着し、セメントと水との接触を一時的に遮断することにより、初期水和反応を遅らせる。

(上記内容は、コンクリート技術の要点'07からの抜粋です。詳細はそちらをご確認下さい。)

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