ホーム > 出版物/JCI規準/論文投稿 > 会誌「コンクリート工学」 > 記事を読む・探す > 2024年9月号目次 > 企画趣旨
近年では生成AIという単語が世を賑わし、AIが非常に身近になっている。様々な国や企業では優先的戦略事項としてAIの活用が検討されており、次々と新たな発表がなされている日進月歩の注目に値する分野である。
建設分野に目を向けてみれば、直近10年の建設投資額は増加傾向を維持しているものの、建設従事者は減少傾向が続いており、熟練技能者の減少や担い手不足が叫ばれて久しい。また、それに拍車をかけるかのように、2024年からは時間外労働の上限規制が建設業にも適用され働き方改革が急ピッチで進んでいることから、生産性の向上やDXは、建設分野において喫緊の課題である。この課題への有効な対策手段として、建設分野でもAIの活用が進んでおり、維持管理の省力化が先行して着目されてきたが、近年では構造計算などの設計分野やレディーミクストコンクリートの品質管理といった施工分野など上流側への実装拡大が図られている。また、AIは熟練技能者の技術を若手技能者へ橋渡しするためのツールや現場での安全を管理するためのツールとしての活用も期待されており、AIはこれからの持続可能な社会実現に向けて建設分野のゲームチェンジャーとなる可能性を秘めていると言える。一方で、本特集号記事内でも多く取り上げられているようにAIにはブラックボックス化という課題があり、十分な知識や検証がないままの導入は危険が付きまとうのも否めない。そのため、導入にあたっては、AIに係る専門知識の必要性や設備投資の面で導入への障壁は決して低いとは言えず、職人的な技術者によって支えられてきた建設業という特色も相まって導入に踏み切れない事例も多いと思われる。
そのような背景を受け、本特集号においては、コンクリート分野におけるAI活用事例や研究開発の最前線だけでなく、コンクリートという枠だけにとどまらないAI導入の課題や熟練技能者における暗黙知の抽出といった幅広い範囲から寄稿いただいた。本特集号が、AI導入の障壁を下げ、これからのコンクリートとAIの発展の一助となれば幸いである。
(コンクリート工学編集委員会)