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近年、コンクリートに関する数値計算技術は、多方面で進化・活躍しており、建築および土木分野で重要な役割を果たしています。特に構造分野では数値計算技術を重要視する傾向が学会の動向からも伺えます。例えば日本建築学会の2022年全国大会の鉄筋コンクリートのパネルディスカッションでも、「FEMはどこまで進んだか?─最新の情報紹介と今後の展開─」が開催され、多くの聴講者を集めています。土木学会では、令和5年度全国大会研究討論会で、「数値解析のV&V(Verification&Validation)は何を変えうるのか?どう変えるのか?」が企画され、好評を博したと聞いています。これらより、構造解析に対して、多くの技術者・研究者が深く関心を寄せていることが分かります。
最近はこのような構造的な分野だけでなく、耐久性に関する分野にも数値計算技術が使われるようになりつつあります。例えば、材料の劣化やひび割れの進行等による寿命予測や保全計画の策定に活用されています。また、施工に関する分野では、コンクリート打込み時の充填性確認およびコンクリートの打込み順番等の施工の時から、構造物の解体手順の分野までも数値計算技術の研究・開発が進んでいます。
そのような社会的な動きがある一方、月刊誌コンクリート工学では数値計算技術をテーマとした特集号は過去に事例はなく、講座で非線形有限要素解析入門が掲載された程度となっています。そんな折、数値計算に関係が深い実験に関しては、2022年9月号では「コンクリート構造分野の実験・計測技術」が特集され、実験に関する種々の情報が紹介され、会員にとって貴重な情報源となりました。実験は、非常に貴重な結果が得られる一方、多くの時間と労力、安全上の制約、コストの問題が生じることがありますが、数値計算による解析は、実験と比較すると比較的に短時間で結果を得ることが可能であり、安全性やコストの制約を回避することができます。また、試行錯誤が安価でできるという点も数値計算のメリットとして挙げられます。ただし、数値計算にもいくつもの課題があります。すべての現象を再現できるわけではないこと、計算上種々の誤差があり精度的な課題等もあります。
そこで、本特集号では、幅広く数値計算技術に関する色々な情報および事例を集めることは会員にとって有意義であろう、コンクリートに関する数値計算技術の現状を知ってもらおうと企画しました。この特集号を機会に、数値計算に馴染みのない読者に対しても、興味をもってもらうとともに、日常業務のヒントとなれば幸いです。
(コンクリート工学編集委員会)