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前川宏一
2024年6月18日の臨時理事会において、西山会長の後を継いで日本コンクリート工学会31代会長に推薦され、同日、謹んで拝命いたしました。非力を自覚しておりますが、会員の皆様と本学会の発展、並びに社会の付託に応えるべく、これから2年にわたり、尽力して参りたいと存じます。
学生時代から今日に至る40年、内外4つの大学で教育研究に従事してまいりました。建設材料、設計計画、監理運営を問わず、本学会を通じて多くの領域と職種でご活躍の会員の方々と交流をいただき、分野や団体/組織、職種の別を超えた場でもって育てられた思いがあります。これまで、研究委員会、編集委員会、技術研究担当の理事を務めました。会務の運営に多くの経験を有するものではありませんが、前執行部から引き継いだ直近(DX/電子化、資格制度の事業継続の環境整備、会員サービス強化など)並びに短中期的な課題(エネルギー・環境負荷低減と生産性向上、人材育成と継続支援等)に、努力の方向を見据えたいと考えています。
ここ数年、設計施工に関する生産性向上に関する協議会の進行役を担ってきました。コンクリートに関する事業に対する社会からの要請、就業人口減、働き方改革、資材や労務費の高騰、資源エネルギー・環境負荷の大きな波が喫緊の課題となって、私たちの眼前に存在します。ここではコンクリートに関わる複数の事業主体が生産的な妥協線を見出し、全体の歯車が廻る流れを造ることが必要です。各々が自立分散でありつつ、協調できる形に至るには、上質の情報の共有に基づく相互理解が不可欠であることを痛感した数年でした。本学会はセメント、混和剤(材)、骨材、生コン、設計施工、検査監理、維持更新に従事される会員や団体で構成され、職種も技能・技術・計画・管理運営・教育にまで広がります。この広がりは本学会の特質と潜在力を形成しているものであり、フォーラムとしての場の強化を皆様と共に進めたいと思います。これは本学会の起源である1965年に発足した「日本コンクリート会議」の理念であります。
しかし、違いを受け入れた相互理解と連携は“言うは易く行うが難し”であることは、内外の多くの学協会も経験する所でもあります。自然に任せておくと、近しい領域や職種で固まる傾向は、学協会も免れ得ないと認識しています。これらを勘案し、各種委員会や事業の執行体制等にも複数のルールが設けられてきました。情報化社会の進展とコンクリート工学を取り巻く環境に鑑み、本学会の事業の多様性を強化する必要性も、会員の皆様から意見を頂いている所です。個々の技術や技能の伝承と進歩を止めないことも、情報化で繋げられればと思います。
3年近くに及んだコロナ禍の中で二羽、西山前会長、故信田前専務理事、理事・監事、本部および支部の皆様が会務で払われたご努力に改めて敬意を表する次第です。この間に事業オンライン化の進展を得たとともに、一方でアナログの意義も改めて明らかにされてきました。日常の雑談による意思疎通が組織と社会を繋ぐことも定量化されつつあるようです。右肩下がりの時代では、未来予測が良く当たることは経験の教える所です。ゆえに打って出る機会到来と考え、社会実装に至る道筋で経験する谷を乗り越えるべく、共創の場の強化に努めてまいります。
公益社団法人日本コンクリート工学会
第31代会長
まえかわ・こういち
(横浜国立大学客員教授、東京大学名誉教授)