日本コンクリート工学会

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会長就任挨拶

日本コンクリート工学会の役割と取組み

芳村学

 6月22日に開かれた定時社員総会とその後の臨時理事会において本学会会長を仰せつかりました。もとより微力ではありますが、今後二年間その重責を果たすべく尽力いたす所存でおります。会員の皆様には格別のご支援とご協力をお願い申し上げる次第です。

 本学会は1965年に「日本コンクリート会議」として発足し、「日本コンクリート工学協会」への名称変更を経て、2011年の公益法人化に際して「日本コンクリート工学会」に再度名称変更するという歴史を歩んでまいりました。その間50有余年、先達の弛まぬ努力のおかげをもちまして約7,000名の会員を擁するまでに成長し、2015年には創立50周年を迎えることができました。

 本学会の主要な活動はつぎの四つにまとめることができます。まずは定期刊行物の発行です。会誌「コンクリート工学」を毎月発行しているほか、基幹論文集である「コンクリート工学論文集」と「Journal of Advanced Concrete Technology」をオンライン出版しています。二番目は年次大会の開催です。コンクリート工学に関する全国の研究者と技術者の情報交換の場として1979年から続く年次大会は今年で40回目を迎えます。三番目は資格認定制度です。コンクリート技士、同主任技士、およびコンクリート診断士の認定試験を毎年行い、資格を取得し登録されている方の数は現在、各々、45,556人、10,621人、12,940人に上っています。これだけの数の優れたコンクリート技術者を世に送り出していることは本学会の誇りとするところです。そして四番目は調査研究の実施です。毎年研究テーマを公募し、その中から5件程度を選んで委員会を組織のうえ、研究終了時には報告書を作成し報告会を行っています。本学会創立直後にスタートしたこの制度により、本学会には約50年分の膨大な研究データが蓄積されています。これを広く公開するべく、過去の報告書の電子情報化を行いウェブに掲載する作業を数年前から進めています。

 ところで、成熟産業となったコンクリート工学の分野では、過去にあった材料の高強度化のような大きなブレークスルーが今後も起こる可能性は高くないかもしれません。しかし、学術技術の推進・普及活動をこれまで以上に進め、社会の発展に寄与するためには、新しい研究に常に目を向ける姿勢が必要です。一方で、われわれが社会に訴えなければならない問題もあります。欧州ではローマ時代のコンクリートがいまでも使われ愛されているのと対照的に、日本ではコンクリートに対する評価が低いという問題です。日欧におけるコンクリートの歴史の違いにも起因していますが、「コンクリートから人へ」の標語に代表されるコンクリートに対する負のイメージが影響しているのも確かです。本学会全体としてコンクリートのイメージを向上させる戦略を考える必要があります。

 会員の皆様の多くが土木学会や日本建築学会にも所属され、そちらを自分の「第一学会」と感じておられると思います。教育段階での出身母体によって分かれた土木と建築という帰属感の根底を、出身母体からコンクリートにもし移すことができたならば、本学会が皆様の第一学会となることも可能でしょう。コンクリート技術者としてのアイデンティティーと連帯感を皆様が実感できるような学会となれば、土木と建築の融合を目指して創設された本学会の目的もなかば達成されたことになります。そうなることを念じて已みません。

公益社団法人日本コンクリート工学会
第28代会長
よしむら・まなぶ

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