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魚本健人
新年明けましておめでとうございます。本年も本学会会員の皆様にとってよい年でありますよう心からお祈り申し上げます。
新年を迎え、本学会の昨年の活動を振り返るとともに、今後の計画に触れてみます。
昨年は、「東日本大震災に関する特別委員会」が終了し、「東日本大震災」の調査・研究等に関するまとめとして、第二次提言を発表し、4月と5月に委員会の報告会を東京と大阪で開催しました。耐震補強の施されたコンクリート構造物は軽微な損傷で済んだものが多く、コンクリート構造物は市民の安全確保の面で非常に有用であることが示されました。ただし、残された課題も多くあり、がれきの処理、津波への設計対応、原子力発電所の事故損傷を評価するための学術的な知見の整理、復旧・復興時の法的な緩和措置の必要性などが挙げられています。そのうち、がれき処理に関しては、本学会では、新たに「未利用資源の有効利用FS委員会」を発足させ、検討することにしました。
一方、一昨年末にトンネルの天井床版の落下事故がありました。この事故をもとに、本学会は、老朽化が進みつつあるインフラ構造物への技術的な対応が早急に必要と判断し、「既設コンクリート構造物の維持管理と補修・補強技術に関する特別委員会」を発足させ、活動を開始しました。
また、最近では、地震のほか、洪水、地すべり、土石流、竜巻など多くの自然災害が発生しています。これらの災害に対して強い国づくりの重要性や国土保全の観点から「コンクリート技士・主任技士」や「コンクリート診断士」の活躍が期待されています。そこで、本学会は、受験資格の緩和、資格保有時の特典の明示、各種の広報活動を新たに行い、受験者の増加や資格保有者の活躍の場の拡大を図るようにしました。
一方、世界に目を向けた活動にも力を入れました。昨年は世界の環境問題に関する技術的諸問題を取り上げた2つの国際会議を本学会主催で開催しました。ICCS 13(第1回コンクリートサステナビリティに関する国際会議:5月に東京で開催)とSCMT 3(第3回持続可能な社会を目指す建設材料技術に関する国際会議:8月に京都で開催)です。両会議とも今後の世界を見据えたコンクリート分野の進むべき方向性を模索する重要な会議で、合わせて延べ参加国数76か国、参加者数751名、論文数561件の多くの参加がありました。また、ACIと本学会の共同研究を目的とした「JCI-ACIの共同事業の促進に関する委員会」を設置しました。第1回のACI-JCIジョイントセミナーを本年7月にハワイで開催する計画であり、その後も定期的にワークショップやシンポジウムを開催する計画をしています。
本学会は2015年7月に創立50周年を迎えます。その対応として、JCI創立50周年記念事業実行委員会を設立し、記念事業会、記念シンポジウム、50周年誌の発行、コンクリート工学の技術紹介のDVDの作成などの詳細検討を進めています。
今年は、消費税が上がるものの、東北地方の復興支援や2020年に開催が決定したオリンピック・パラリンピックの設備投資等により、建設分野では経済活動の活性化が期待されています。
このような環境の下で、「日本コンクリート工学会」は会員の皆様とともに、コンクリート工学の研究・普及を通して、コンクリート構造物の重要性を社会に働きかけると同時に、安全・安心な社会基盤を整備した国土を市民に提供することに、貢献していく所存であります。
公益社団法人日本コンクリート工学会
第25代会長
うおもと・たけと
((独)土木研究所 理事長)