ホーム > JCIの紹介 > 会長の言葉 > 日本コンクリート工学会歴代会長 > 次の50年の絆の継続と発展を目指して
桝田佳寛
平成24年の年頭にあたり、謹んで新春のご挨拶を申し上げるとともに、本年が本学会会員の皆様ならぴに本誌読者の皆様にとりまして良い年でありますよう心からお祈り申し上げます。昨年は、我が国のコンクリート分野におきましても、本学会にとりましても大きな出来事が生じた年でありました。
一つ目は言うまでもなく、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による東日本大震災であります。この地震は、マグニチュード9.0というこれまで我が国が経験したことのない大規模なもので、東北・北関東の太平洋沿岸地域は10mを超える大津波によって死者・行方不明者が2万人を超え、建築物の全壊・半壊は合わせて27万戸以上という甚大な被害を受けました。また、福島原子力発電所では、原子炉は安全に停止し、格納容器の破損はなかったものの、冷却水循環装置が作動せず、水素爆発を起こして多量の放射性物質を放出し、近隣住民に避難を強い、周辺の農産物の出荷停止という状況を生み出しました。今後、津波対策、原子力政策の見直しは必至でありましょう。しかし、今回の地震による被害状況を見る限り、耐震対策を施した建築物、高速道路、新幹線などのコンクリート構造物については致命的な被害はほとんど報告されておりません。これは、コンクリート工学に関わる者として誇りにしてよいと思います。この東日本大震災に対する本学会の取組みは、本特集号で紹介されているとおりであり、特別委員会の設置、義捐金の拠出、被災会員に対する会費免除、他学協会との連携とメッセージの発信などがあります。
二つ目は、4月1日をもって本学会は「公益社団法人 日本コンクリート工学会」として新たな一歩を踏み出したことです。公益社団法人への移行に関しては、本誌で何度か紹介されているとおりであり、6月には初めて各支部から選出された代議員による総会が開催されました。本学会は、コンクリート工学に関する学術団体として不動の地位を占めるとともに、コンクリート技士、同主任技士、コンクリート診断士という社会的に高い評価を受けている資格を付与しています。公益社団法人になって、これらの学術的活動および社会的活動が発展していくよう努力していきたいと思います。
三つ目は、本学会がACIの日本支部として発足してから50年目にあたり、ACIの秋季大会がオハイオ州のシンシナティ市で開催されたのに際し、本学会とACIとの共催で50周年記念夕食会が催されたことです。夕食会は、ACI会長夫妻、役員夫妻の他、協定を結んでいる韓国、メキシコからの出席を得て、我が国からは長瀧、友澤元会長、睦好国際委員会ACI担当委員、河井事務局長他が参加して和やかな雰囲気の中で進められました。会の最後に過去50年の日米の絆を確認し、次の50年の絆の継続と発展を祈念しました。本学会は、社団法人となったときから数えて50年にあたる2015年に記念事業を行う予定ですが、ACIから見た50周年の記念事業が実行できたことは非常に有意義であったと思います。
昨年3月に発生しました東日本大震災からの復旧・復興は、日本社会の責務であり、日本コンクリート工学会は、会員の皆様とともにコンクリート工学およびコンクリート技術を通して安全・安心な社会基盤を整備し、復旧・復興に貢献していく所存です。
社団法人日本コンクリート工学協会
第24代会長
ますだ・よしひろ
(宇都宮大学工学研究科地球環境デザイン専攻 教授)