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阪田憲次
明けましておめでとうございます。
新しい年が、JCI会員の皆様、本誌読者の皆様にとって、幸多い、そして稔りの多い一年でありますよう、お祈り申し上げます。
さて、昨年は、JCIが主催する国際会議が、2件、我が国において開催されました。その一つは、9月30日~10月2日の3日間、伊勢志摩において開催された、“The 8th International Conference on Creep, Shrinkage and Durability of Concrete and Concrete structures”、CONCREEP 8(実行委員長:田邊忠顕・名大名誉教授)です。発表件数は196件、登録参加者数は270名でした。つぎに、10月27日~29日の3日間、東京において、“8th International Symposium on Utilization of High-Strength and High-Performance Concrete”(実行委員長:魚本健人・芝浦工大教授)が開催されました。発表件数は175件、登録参加者数は281名でした。
いずれの国際会議も、歴史のあるものですが、参加者および発表件数ともに、最近の国際会議では例を見ない規模の大きなのとなりました。とくに、外国からの著名な研究者の参加も多く、両会議の運営に対して、お褒めをいただきましたことはうれしいことです。
私は、両会議に出席し、ほとんどの時間を発表会場で過ごしましたが、我が国の論文の質の高さ、研究者の層の厚さおよび力量を誇らしく思いました。
11月7日~8日の2日間、韓国のソウルにて、KCI-JCI-TCI Joint Symposium が開催され、日韓台三国から18件の論文が発表されました。また、それに引き続き、11月11日~13日の3日間、ベトナムのホーチミンにおいて、“The 3rd ACF International Conference ACF/VCA-2008”が開催され、論文発表件数は183件、登録参加者は約300名でした。いずれも、JCIが深く係わりを持つ組織の行事で、日本からの参加者も多かったと思います。とくに、後者は、2004年のACF創設より本年までの4年間、魚本健人教授が会長を務め、このような盛大な国際会議を開催できるところまで導いてこられたリーダーシップに、事務局としてサポートいたしましたJCIとして、敬意を表したいと思います。
これらの国際会議に出席し、fib会長、ACI副会長、KCI会長、TCI会長、VCA会長等、関係者と意見交換をする機会を得て、国際社会、とりわけアジアにおけるJCIの立ち位置について、考えさせられました。
アジアは、世界の建設投資の多くの部分を占め、経済発展が著しい地域です。しかし、個々の国のコンクリート工学および技術のレベルにはかなりの差があると思われます。今までも、アジア地域の一員として、JCIは、さまざまな形で、アジア諸国と連携し、コンクリート工学および技術の発展に貢献してきました。ICCMCによるアジアモデルコードの整備事業や日韓Joint Committee の活動は、その代表的なものです。そのような活動を通じ、アジアにおけるJCIの存在感が増し、そのリーダーシップに期待する半面、その大きさを警戒するむきもあるように思います。今後は、各国の学術組織が所属するACFの枠組みの中で、さまざまな事業および連携を推進することにより、アメリカ、ヨーロッパにつぐ第三のコンクリート工学および技術の拠点を形成することに力を注ぐことが、JCIのアジアにおける国際的役割ではないでしょうか。
社団法人日本コンクリート工学協会
第23代会長
さかた・けんじ