ホーム > コンクリートについて > 月刊コンクリート技術 > 2019年4月号
日本の国土の多くは山であり,海に囲まれ,雨が多く,地震が多いなど,厳しい環境に置かれているといえます。このような環境で安心して暮らせるように,社会資本整備,防災・減災,環境保全などを行うことが建設業の役割であり魅力の一つです。このような建設業の役割や魅力を,将来を担う若者たちに伝えるべく,様々な取り組みを業界全体として取り組んでいます。
本記事では,このような取り組みの一部として実施している,各社技術研究所の施設公開を通じてコンクリートに触れてもらう機会についてご紹介させて頂きます。
東洋建設美浦研究所では,茨城県美浦村生涯学習課および前田建設工業技術研究所のご協力のもと,毎年施設公開と体験講座を開催しています。「土木の日(11月18日)1)」にちなんだ行事として,土木学会関東支部の後援のもと,今回で14回目を迎えました。
写真-1 集合写真(ドローン空撮) |
施設公開では,研究施設の見学を行った後に,3つの体験講座を実施しました。
(1)練混ぜ体験【来て,見て,さわって】
暮らしを支える便利なコンクリートを知ってもらおうと,水中不分離性コンクリートの見学や,着色モルタルを用いた人形作りを行いました。
(2)力比べ体験【これで君も地震博士】
地震に強い建物や橋の仕組み,液状化現象についてパネルや模型で説明した後,家に見立てたアルミ枠との綱引きや,橋が重さに耐える仕組みを紙工作で体験できるペーパーブリッジを作製し,徐々におもりを増やして、壊れるまでの挙動を確認しました。
(3)再生エネルギー体験【風の力で電気をつくろう】
環境にやさしい再生エネルギーのひとつである風力発電の仕組みを学んでもらった後に,ペットボトル風車の作製を行いました。大きな扇風機の前で,風を受け,先端についているLEDライトを発光させる体験してもらいました。
写真-2 人形作り体験 モルタルに着色して練り混ぜ型枠へ |
写真-3 液状化現象の再現 熱心に耳を傾ける子供たち |
写真-4 風力発電体験 扇風機で自作の風力発電で発電中 |
写真-5 橋の構造を学ぶ ペーパーブリッジに重しを乗せてみる |
コンクリート,構造,環境の3つの観点から土木・建築について体験してもらいましたが,アンケートでは子供たちや保護者の方から,「びっくりした」,「楽しかった」,「次回も参加したい」などの意見を頂いており,毎年好評な施設公開イベントとなっています。
鹿島技術研究所では,「土木の日」にちなみ,毎年,近隣の小学生を招待した体験型の見学会を開催しています。このイベントは,子供たちに「土木の素晴らしさ・大切さ」を理解してもらいたいという願いを込めて土木学会関東支部と共催で1990年から実施しています。
見学会では,まず土木とは何か,「土木の日」が11月18日に制定された理由を説明した後,
といった教室・体験型見学を行っています。
「コンクリートの事をもっとよく知ろう!」では,学校の校舎や道路など,小学生にとっても身近な所に使われているコンクリートがどのような材料から作られるのか,どのように出来上がるかの授業を行っています。その後,急速に硬化するように予め調合された市販のモルタルを使用して,小学生自身の手で練ってお菓子の型等に流し込み,硬化した物をお土産として持ち帰って貰っています。
写真-6 見学会の様子(1) |
写真-7 見学会の様子(2) |
子供たちからは,「めったに学べない事を教えてもらい,貴重な体験ができてとても楽しかった。」,「橋の説明や実験は勉強になったし,おもしろい。ここで働きたい。」などといった感想が聞かれ,毎年好評な見学会となっています。
本記事では,地域住民の方々へ各社の技術研究所を通じて「コンクリート」に触れて貰う公開イベントについてご紹介させて頂きました。本学会会員の皆様にとって,地域交流イベントの参考に,ひいては,一般の方のコンクリートへの理解拡大,次世代を担う技術者の卵育成の一助となれば幸いです。
*本記事の公開イベントは近隣住民のみを対象としており,一般公開はしておりません。