日本コンクリート工学会

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2018年8月号

「非破壊試験によるコンクリートに生じたひび割れの補修評価方法の確立に関する研究委員会」活動概要


委員会活動概要

コンクリートに生じたひび割れや初期変状は,内外への物質移動を容易にし,構造物の安全性の低下を早期に引き起こす要因のひとつと考えられます。そのため,ひび割れに対する種々の補修工法が提案されています。また,近年では自己治癒を活用したひび割れの閉塞も試みられています。しかしながら,コンクリートに生じたひび割れや初期変状(表面のみならず深部も含む)の補修状況を確認し,その効果を評価する方法は確立されていないのが現状です。
JCIでは,2016年に「非破壊試験によるコンクリートに生じたひび割れの補修評価方法の確立に関する研究委員会(委員長:京都大学 塩谷智基特定教授)」が設置されました。本委員会では,種々のひび割れ補修方法を整理するとともに,その補修効果を確認するために必要となる指標や非破壊試験方法を整理しています。また,補修効果を確認する上での課題について管理者や施主を対象としたアンケートにより調査し,補修とその効果確認を実施する上での問題点を検討しています。最後に,補修の効果確認を一般化するための維持管理フローを提案しています。
本稿では,2016年度から2年間にわたる標記委員会の活動成果の概要をご紹介するとともに,本年9月に開催するシンポジウムについてご案内いたします。

執筆者:情報コミュニケ—ション委員会 委員
河合 慶有(愛媛大学大学院)
(非破壊試験によるコンクリートに生じたひび割れの補修評価方法の確立に関する研究委員会 委員)

※会員専用ページには「増刊コンクリート技術2018年8月号」として,本記事のより詳細な内容(一部結果含む)が掲載されています。そちらもご覧ください。
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設置されたWGの活動概要

本研究委員会では,下記のWG1~WG4を設置し活動を行いました。WG1では,ひび割れ補修工法の整理および補修方法・目的を考慮した評価項目を抽出し,WG2では,ひび割れの補修評価に関する事例の整理を行っています。また,WG3では非破壊検査方法の整理および分類を行い,特に実現場において評価が必要と思われる補修対象の絞り込み,およびそれに対する有効な手法の洗い出し作業を行っています。さらに,WG4では評価フローの構築と維持管理システムの将来像の提案として,本研究委員会の成果を全体の維持管理システムの一部ととらえ,構造物のライフスパンの中での運用方法を整理しています。また,2017年9月にブリュッセルにて開催されたRILEM 269TC-IAM(Damage assessment in Consideration of Repair/Retrofit-Recovery in Concrete and Masonry Structures by Means of Innovative NDT)委員会にて,本委員会の中間成果を報告し,活発な議論が行われました。

(非破壊試験による補修効果の評価方法)
本研究委員会では補修前後での評価方法(図−1参照)に主眼を置き,活動を行ってきました。ここで特に考えておく必要があるのは,補修において何の性能をどこまで回復することを期待するかを明確にすることです。JCI「コンクリートのひび割れ調査,補修・補強指針-2013-」に従えば,図−1の縦軸は「使用性能」とされていますが,具体的に要求されている性能を絞り込むことが重要であるといえます。
ひび割れ補修後の目視による外観検査では,深さ方向の情報を得ることはできないため,補修対象のひび割れの深さや,ひび割れ中のどこまで補修材が入ったかなどの情報を得ることはできません。そこで,非破壊試験方法の活用が期待されるといえます。例えば,弾性波の伝播速度の断面内における2次元もしくは3次元的な速度分布を知ることができれば,深さ方向を含めた補修前後の相対的な比較を行うことができます。

図-1 既存構造物および補修前後での評価イメージ img
図-1 既存構造物および補修前後での評価イメージ

(補修評価を含む維持管理システム)
限られた予算の中で効率的・効果的な維持管理が望まれる昨今においては,構造物の状態や重要度を正確に見定め,適切な維持管理システムを選定することが重要であるといえます。本委員会では,管理タイプをI(標準)からIII(重要度高)に分けて,補修評価を含む維持管理フローを提言しています。特に,補修施工後に必ず「補修評価フロー」に進み,「補修評価フロー」では,工種や要求性能に基づき,非破壊検査手法も含めた検査方法を選定・実施することとしています。さらに,1年後に再検査を設け,連続した評価において問題ないと判断された場合のみ補修評価プロセスを完了し,定期点検フローに戻ることができるとしたフローを提案しています。


委員会シンポジウム

本研究委員会の活動報告を兼ねたシンポジウムを下記の日程で開催いたします。本稿でご紹介した活動内容の詳細をこのシンポジウムで報告いたします。また,研究委員会の活動に関連した一般論文の発表もございます。皆様奮ってご参加ください。

■「非破壊手法を用いたコンクリート構造物の補修評価」に関するシンポジウム
日時:2018年9月25日(火) 10:00−16:40(予定)
場所:千代田区立内幸町ホール(東京都千代田区内幸町1-5-1)

※プログラム・申込方法などの詳細はこちらをご覧ください。

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