日本コンクリート工学会

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2016年3月号

「性能規定に基づくASR制御型設計・維持管理シナリオに関する研究委員会」中間報告と、国際ワークショップ(2016年3月29日開催)のご案内


1.委員会内容

アルカリシリカ反応(以下,ASR)に伴うコンクリート構造物の劣化に対しては,これまでの総アルカリ量の規制,無害骨材の使用,あるいは混合セメントの使用といった対策により,ある一定の効果が得られてきています。しかし,多種多様な骨材特性,過酷化かつ長期化する供用条件のもとでは,未だASR劣化構造物の事例が見られていることから,現行のコンクリートの配(調)合検討の段階における「抑制」型の設計では,ASR発生のリスクを「皆無」とみることは現実的でありません。

写真-1 アルカリシリカ反応を呈した構造物事例 img 写真-1 アルカリシリカ反応を呈した構造物事例 img
写真-1 アルカリシリカ反応を呈した構造物事例

ASRが発生しないとする設計思想のもとでは,
①維持管理のフェーズで事後維持管理とならざるを得ない状況となる。
②ASR膨張の進行予測技術が確立できていない。
③構造物の診断,特に性能評価や各種対策への有効な展開が困難となりやすい。
といったことが懸念されます。

そこで,本委員会では,構造物の要求性能とASRリスクを考慮し,
①供用環境や岩石学的特徴に配慮した適切なコンクリート配合試験法に基づくASR膨張予測
②構造性能を含めた要求性能と構造物の重要度に応じたASR「制御」型の設計および維持管理の連係シナリオの確立
について検討を進めております。
※本研究委員会のWG構成・活動内容(概要)については,こちらをご参照願います。
 http://www.jci-net.or.jp/~tc152a/

写真-2 岩石学的診断 img
写真-2 岩石学的診断
写真-3 コンクリートプリズム試験 img
写真-3 コンクリートプリズム試験

この度,約1年間の活動による委員会の中間成果の海外発信,ならびに国内外の重要構造物のASR現状とそのマネジメントについての情報共有を目的に,以下の国際ワークショップを開催いたします。興味のある方には,奮ってご参加いただければ幸いです。


2. 国際ワークショップのご案内

"ASR management of important and long-life structures, dams, nuclear power relating facilities, and radioactive wastes disposal"
「長期供用重要構造物のASRマネジメント-ダム,原子力関連施設,および放射性廃棄物処分」に関する国際ワークショップ

開催日: 2016年3月29日(火)
開催場所: 中央大学駿河台記念館610号室(6階)
(東京都千代田区神田駿河台3-11-5)
申込方法: 本国際ワークショップの詳細、ならびに参加費や参加申込方法は,こちらの参加募集をご参照願います。
http://www.jci-net.or.jp/j/events/symposium/20160329_v2.html

●プログラム(予定)

司会:山本貴士(京都大学)
第1部:特別講演

カナダでの大規模ダムにおけるASR抑制の試み
マイク・トーマス教授(ニューブルンシュヴィック大学)
代理講演:委員長山田一夫(国立環境研究所)※日本語
The experiences of EDF for ASR management of nuclear power plant
(原子力発電所のASRマネジメントに関するEDFの経験)
フレデリック・コッペル博士(フランス電力会社)※英語
The experiences of EDF for ASR management of dams
(ダムのASRマネジメントに関するEDFの経験)
エティエンヌ・グリマル博士(フランス電力会社)※英語
Long experiences and structural simulation of real dam and nuclear power facilities decided to be dismantled
(現実のダムと廃炉が決定した原子力施設の長期にわたる経験と構造シミュレーション)
ウラディミール・ゴセフスキー博士(ハイドロケベック社)※英語

第2部:パネルディスカッション
「ASRの確実な抑制と将来予測」※英語

トピック1:ASR抑制対策(抑制から制御へ,ASR膨張予測と性能設計の可能性)
話題提供山田一夫(前掲),佐川康貴(九州大学)
トピック2:ASRの維持管理(補修とひび割れと付き合うモニタリング)
話題提供:丸山一平(名古屋大学),参納千夏男氏(北陸電力),堀岡良則氏(阪神高速道路)
トピック3:ASRを起こした構造物の構造性能シミュレーション(何を,なぜ?)
話題提供:上田尚史(関西大学),山本貴士(前掲)
コーディネータ:山田一夫(前掲)
パネリスト:エティエンヌ・グリマル博士(前掲),ウラディミール・ゴセフスキー博士(前掲),鳥居和之教授(金沢大学)ほか
図-1 ASR劣化構造物の構造解析事例 img
図-1 ASR劣化構造物の構造解析事例

皆様のご参加をお待ちしております。

執筆者:合田寛基(九州工業大学)
(性能規定に基づくASR制御型設計・維持管理シナリオに関する研究委員会委員)

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