ホーム > コンクリートについて > 月刊コンクリート技術 > 2015年11月号
ダムは様々な目的で作られていますが,その一つとして水力発電の取水が挙げられます。電気事業に関係する象徴的なコンクリート構造物としてコンクリートダムが挙げられることから,今回は,コンクリートダムにまつわる幾つかのことを紹介してみたいと思います。
写真 上椎葉ダム(宮崎県) ※執筆者撮影(2013年5月,女神像公園から) 日本初の100m級アーチ式コンクリートダム(1955年竣工,堤高110m)である。宮崎県を流れる耳川水系で最も上流側のダムで,日本三大秘境の一つに数えられる椎葉村に位置する。山深くに悠然と佇む姿と,上流に広がる日向椎葉湖の美しい様子を,女神像公園から一望できる。 |
コンクリートダムなどのマスコンクリートにおいては温度ひび割れの問題が古くから知られており,温度応力解析をはじめとする温度ひび割れに関する解析技術,これと密接に関係する低発熱コンクリートの開発,そしてRCD工法等の施工技術において数々の発展を遂げてきました。
ここでは,上記のうち,特に温度応力解析について簡単な紹介をしたいと思います。
温度ひび割れとは,温度応力により発生するひび割れのことを指します。温度応力とは,文献(JCI:マスコンクリートのひび割れ制御指針2008)によれば,「セメントの水和発熱および自己収縮に伴うコンクリートの体積変化が拘束されるために部材内に生じる圧縮応力,または引張応力」です。これを解析する技術が温度応力解析です。温度応力について,参考になりそうな表現を幾つか引用します。下記の文献を参考にしています。
温度応力解析に関するソフトも充実してきているようです。JCIにおいては,マスコンクリートソフト作成委員会により温度応力解析ソフトが開発されています。
コンクリートダムの新規建設の数は非常に少なくなっていますが,コンクリートダムに限らずマスコンクリートのひび割れについては,乾燥収縮や自己収縮も含め,研究の余地がまだまだあるようです。コンクリートダムを通じて得られた数々の知見・技術も参考にしてみてはいかがでしょうか。より具体的な例や詳細はJCIの各種出版物等をご参照下さい。
JCMAC3による解析例(JCI Webページより) |
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日本におけるコンクリートダムの歴史は1900年竣工の布引五本松ダムに始まり,現在に至るまで1000基以上が建設されています。ここでは,日本や世界のコンクリートダムの歴史等に関する記事,各種ランキング等の情報を,主に会誌「コンクリート工学」の記事からピックアップしました。
コンクリートダムに関する様々なランキング(堤高・貯水容量・貯水池面積など)について,例えば以下に整理されています。また,これらの資料等を基に,コンクリートダムの堤高の歴史的変遷をまとめました。
図 コンクリートダム 堤高の歴史的変遷 |
2012年には中国の錦屏(Jinping)第1ダムが,コンクリートダムに限らず,全ての形式のダムの中で世界一の高さとなっています(305m,アーチ式コンクリートダム)。
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ダムは,様々な大きさ・形状のものがあり,時期によっては放流の様子が見られ,ダムへのアクセスや周辺の風景も含め,多岐にわたる楽しみ方ができる構造物であると言えます。まずは,お近くのダムを見学してみるのも一興です。さらに,見学会ではフリーにアクセスできる以外のマニアックな部分に立ち入ったり,いろいろな説明が聞けたりするかもしれません。ここでは,見学会情報をまとめてみました。
【ダム見学会(2015年9月現在の情報)】
【建設中のコンクリートダム 見学会】
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