ホーム > コンクリートについて > 月刊コンクリート技術 > 2015年8月号
最近,日本では,アフリカが魅力ある市場として取り上げられる機会が多くなり,アフリカに進出する民間企業に対する注目度も高まりつつあります。日本国政府も,2013年6月に横浜で第5回アフリカ開発会議(TICAD)を開催するなどアフリカに対するこれまでの援助以上に,投資に注力することを表明しています。
本工事の現場は,そんなアフリカ・ケニアのモンバサにあります。
工事現場状況:2015年6月現在 |
完成予想図(鳥瞰図) |
現場位置図 |
ケニアでは,工事に使用するクレーン付台船等の作業船がほとんど無いため,すべてフィリピン,シンガポールといった海外からの調達となりました。
これらの作業船の運搬には,半潜水式台船と呼ばれる自航式の大型台船を使用しました。大型台船のうえに複数の台船を積む形になります。
工事着工当時は,まだ隣国のソマリア海域での海賊行動が沈静化しておらず,曳航速度が遅いと海賊被害にあう懸念が残っていました。
そのため,速度の比較的早い自航式の大型台船を用いて複数の作業船を一度に運ぶという方法を採用しました。
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埋立に使用する600万m3の埋立砂は,トレーラーサクションホッパードレッジャーと呼ばれる自航式の浚渫船を使い,外洋で採取し,現場埋立エリアに運搬してきます。
運搬してきた埋立砂は,浚渫船より排砂管を通してポンプの力で排出します。排砂管を通して送り出した埋立砂を砂撒き船を用いて,所定の場所に所定の厚さで撒きだします。砂撒き船はGPSとウインチで位置が制御できるようになっています。
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現場の埋立区域は,非常に軟弱な地盤となっており,厚いところでは約30m近く軟弱土が堆積しています。そこに埋立砂を運んで,撒きだしただけでは,将来コンテナをヤードに積んだ時の上載荷重に耐えることができません。
そこで,埋立砂を,軟弱な地盤を乱さないように薄く,何層にも分けて撒きだしたのち,その埋立砂の上から,Prefabricated VerticalDrainと呼ばれる帯状の管を埋立砂を通して,軟弱地盤の下端高さ近くまで挿入します。埋立砂のうえに載荷盛土と呼ばれる重石を載せることで,圧密を促進させます。
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設計水深が11mおよび15mあるバース20,バース21では,コンクリート床板を鋼管杭で支える鋼管杭式桟橋になっています。鋼製杭は,直径が700mm~900mm,長さは長いもので,約50mあります。
当初原設計では,約10mから20mの杭を現場で3本つないで50m弱にするよう検討されていましたが,大型の400t吊クレーン付台船を導入することで,50m1本ものでの打設を可能にし,継手の溶接等にかかる作業時間を省きました。
鋼管杭を打設したのち,そのうえにコンクリート床板を築造します。そのための鉄筋設置,型枠設置,コンクリート打設となります。鉄筋,型枠,コンクリートといった工事の要となる基本的な工種ですが,桟橋上部工となると,現地では,同様の工事の経験のある建設会社,熟練技能者が確保できなかったため,元請会社の日本人職員,フィリピン人職員が,いちから現地の作業員を指導して施工を進めていきました。
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広大な埋立地のほとんどが,将来コンテナの置かれるヤードとなります。幅300m,奥行600m,16レーンのコンテナヤードは世界でも類まれな奥行の深いコンテナヤードとなります。
別工事にて2基のSSG(Ship to Shore GantryCrane)が桟橋上に,4基のRTG(Rubber TyredGantry Crane)がコンテナヤードに導入され,コンテナの運搬に利用されます。このRTGは,今後運営状況に併せて随時追加されていく見込みです。
コンテナはスタッキングプレートと呼ばれるコンクリート板の上に最高6段まで積み上げられます。本工事の完成にともないモンバサ港の貨物の取り扱い能力は55万TEU向上する見込みです。
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埋立地に建造する建築構造物は,圧密沈下を進行させる載荷盛土期間を経てからの着工となり工期が限られるため,全18棟をほぼ同時に施工していきます。
現在,埋設配管工事は概ね完了し,建物については全棟にわたって仕上げ工事の最盛期をむかえ,約700人の現地作業員が従事しています。
設備資機材の多くは輸入に頼ることになり,またその施工は全エリアにわたるため,他工種との調整が重要となります。輸入の手続をすみやかに行い,限られた施工ヤードの中で,タイミング良く,搬入,組立,据付を行うことが求められます。
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工事の最盛期には,約2,000人を超す作業員が現場に従事しました。元請会社の職員は,日本人,フィリピン人,ケニア人,他,また協力業者は,オランダ人,インドネシア人,シンガポール人,スリランカ人等で構成されています。文化や宗教の異なるいろいろな人たちを一つの工事チームとしてまとめ上げていくのは,海外の現場の醍醐味のひとつです。
作業船,重機といった機械の調達が困難であるのと同様に,ケニアでは,重機オペレーター等の技能者を確保するのも一苦労です。ケニアでは本工事の規模の海上工事は数十年ぶりとのことで,作業船での海上工事を経験したクルーはほとんどいませんでした。
安全面,技術面での指導はもとより,技能面の指導も元請会社の職員により進めることになります。
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コンクリートの材料調達からフレッシュコンクリート出荷,施工までについて,日本のように整備された施設はありません。
コンクリートの生産は,2基のバッチングプラントを輸入し,現場内に建設して,用途別に使い分けて行っています。
コンクリート製造に先立ち行った,現地の骨材等の原材料の調査にもとづき,細骨材(砂)は現場モンバサから約110km離れたマリンディから,粗骨材は約70km離れたキリフィから調達しています。
各種リスクをヘッジするとの観点から国内産セメントと輸入セメントの2種類を使用しています。また,混和剤等は,全て輸入しています。
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2012年3月1日に着工した工事は,2015年6月現在,約89%の出来高となり,コンテナヤード舗装工,建築設備工,道路舗装工等の陸上工事を主とした終盤戦に入っています。今後とも工事の安全を第一に職員作業員全員の力を合わせ,2016年2月末の工期内の完工を目指してまいります。