日本コンクリート工学会

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コンクリートの行く末と日本コンクリート工学会の未来

西山峰広

 年初にあたり、皆様のご多幸をお祈りいたします。

 昨年9月30日、大阪市立科学館の共催と大阪兵庫生コンクリート工業組合の協力、および、建設会社などからの各種景品提供を得て、日本コンクリート工学会近畿支部広報部会の方々が中心になり、「コンクリートっておもしろい!!」が大阪中之島にある大阪市立科学館で開催されました。セメントアート「ミニ消波ブロックを作ってみよう!」、VR・MR体験「仮想空間で建設現場を見てみよう!」、生コン車の展示「生コン車も来るよ!」、PCトランポリン「コンクリート製トランポリンで遊ぼう!」、コンクリート楽器「コンクリート製楽器ってどんな音色?」の各コーナーを通して、親子で楽しみながらコンクリートについて学ぶ催しです。さらに、各コーナーを体験してスタンプを集めると素敵な景品が貰えます。生コン車から出てくるボールに書かれた数字に対応する賞品も貰えます。賞品にはセメント袋入りの入浴剤や付箋ペンなどがありましたが、最も人気があったのが、アジテータ車のミニカーでした。これが貰えずに泣く子もいました。多くの子どもたちが親とともに参加し、楽しめるこのような催しを休日にもかかわらず開催していただいた近畿支部の皆様に感謝申し上げます。近畿支部会員の中にも子どもさんを連れて参加された方がおられました。

 子どもたちにとってコンクリートはどのようなものに見えているのでしょうか?おそらく何と言うこともない、地面に転がっているただの石と同様の存在に見えているのでしょう。どこにでもあり、意識されないものなのでしょう。子どもたちの通う学校はほとんどが鉄筋コンクリート造ではありますが、コンクリートを直接触ってその冷たさや硬さを感じてみようとすることはないと思います。また、圧倒的な量のコンクリートを見るのは、ダムや橋梁であり、それらを身近に感じることは稀でしょう。しかし、それでも頭の片隅に、あのときコンクリートに触れた、という記憶があれば、大人になってからのコンクリートへの見方が変わるかもしれません。

 この催しに参加した子どもたちが社会の主役となる30年後、さらには、100年後コンクリートはどのようになっているのでしょうか?コンクリートはまだ存在しているのでしょうか?

 学生からよく聞かれる質問があります。コンクリートよりもよい構造材料は今後開発されるのでしょうか?私の回答は、コンクリートの定義にもよるでしょうが、価格、入手の容易さ、これまで長い年月にわたり培われてきた技術の蓄積などからしばらくは構造材料の地位を失うことはないでしょう。しかし、どのような革新が起こるかはわかりません。AIが新材料を開発するかもしれません。いつとは言えませんが、いずれコンクリートに代わる構造材料が現れると思います。

 コンクリートがなくなることは日本コンクリート工学会として好ましいことではありませんが、ひとつの材料の下に集まって学会を構成している以上、その材料が衰退してしまうと、それに伴って学会としての役割がなくなっていく可能性はもちろんあります。日本建築学会や土木学会という様々な分野を包含した学会であれば、生き残りの道はいくつもあります。コンクリートの定義にもよりますが、砂利や砂を結合材で固めたものという定義であれば、セメントも使わない、水も使わない、というコンクリートもあり得ます。

 いずれ日本コンクリート工学会が大きく変わらなければならない日が来ることでしょう。

公益社団法人日本コンクリート工学会
第30代会長
にしやま・みねひろ
(京都大学大学院工学研究科建築学専攻 教授)

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