ひび割れの影響検討
- ひび割れと構造物性能の関係
- 鉄筋コンクリート
・引張力によって生じるひび割れの幅や深さを実用上問題のない程度に抑制する
・ひび割れの発生を防ぐことはできない
⇒膨張材などの混和材の混入,プレストレスの導入で発生を抑制
- プレストレストコンクリート
・圧縮応力を与えることで,ひび割れの発生を抑制
・圧縮応力が作用していない部位, 圧縮応力の作用方向(軸線方向)と直角方向は引張応力が発生しやすいため,注意
・プレストレス導入前は鉄筋コンクリートよりひび割れが発生しやすい(≒鉄筋量が少ない)ことに注意
- ひび割れと耐荷性
ひび割れが発生した部位・方向・幅・深さ・時期を基に,施工中から供用後に至る間に対し,ひび割れ発生時点での設計上の応力を考慮したうえで判断
- ひび割れと耐久性
環境条件を考慮し,施工中から供用後に至るまでの間に,ひび割れから入る水や酸素,塩分などの影響を判断
- ひび割れと美観
個人差があり,一概にひび割れと美観との関係を示すことは困難。雨天にひび割れが目立つ場合もあり,注意が必要
- ひび割れと居住性・資産価値(機能)
(主に建築物)カビの発生,内部の汚損,機器の故障などによる居住性や資産価値の低下
- ひび割れの進行性に対する検討
- 施工中は,コンクリートの材齢が若いため強度の発現が十分でないため乾燥収縮を生じやすい。施工の進展に伴って環境条件や荷重状態が刻々と変化する
⇒ひび割れの幅や深さ,量の変化を推定し,問題を生じないか確かめる。定量的な評価がベストだが,増える,減るなどの定性的な評価でもよい。(定量的な評価にこだわるあまり,時間を浪費するのが最もよくない)
- 耐荷性への影響の検討
- 乾燥収縮や沈みひび割れ,温度ひび割れ等の場合,材料や施工に起因するひび割れの大半は,耐荷性への影響が無いか,無視できるほど小さい場合がほとんど
⇒将来,ひび割れ部に大きな力が作用する場合を除いて,通常は耐荷性への影響の検討は不要
- 曲げやせん断などの力学的作用によって発生した場合,耐荷性に影響を与えることがあるため,検討が必要
- 耐荷性への影響の評価方法にはさまざまな方法があり, 設計(構造)計算書を参照して,適切な方法で実施することが重要
⇒必要に応じて,設計したコンサルタント(構造設計事務所)等に検討依頼
- 耐久性への影響の検討
- ひび割れ幅,本数,深さとともに,その位置が重要
笘栫uコンクリートのひび割れ調査,補修・補強指針-2009-」の4章「評価」を参照
- 施工の進行に伴ってひび割れ幅の変化が予想される場合は, 完成時点での推定ひび割れ幅を耐久性の検討に使用
- コンクリートの表面にとどまるようなひび割れや,将来閉塞する ことが予想されるひび割れは耐久性への検討は不要
⇒ただし,閉塞したひび割れであっても,水の影響がある位置の貫通ひび割れの場合,長期的な水の浸透により耐久性に影響を及ぼす場合があるので注意
- 第三者に与える影響の検討
- 一般的に,構造物の通常の使用状態において,ひび割れが第三者から容易に視認できる場合は影響があるものとし, それ以外は影響が無いものと判断
- ひび割れ部の下方に道路や鉄道,駐車場や公園などの施設 がある場合には,影響があるものと判断