平成25年を迎えて
会長 魚本健人

 新年明けましておめでとうございます。本年が日本コンクリート工学会会員の皆様にとって良い年でありますよう心からお祈り申し上げます。

 一昨年3月11日に発生した「東日本大震災」は地震、津波、更には原子力発電所の事故による放射性物質汚染など甚大な被害を引き起こしました。被災地域の復旧・復興には相当の年月が必要とされることになりましょう。

 本学会は、「東日本大震災」の調査・研究等に関して様々なことに取り組みました。震災発生後に直ちに東日本大震災に関する特別委員会を本学会内に立ち上げました。その報告会が今年の4月以降に東京と大阪で開催される予定です。また、昨年11月には他学協会等と共同で実施した日本学術会議の学術フォーラム「巨大災害から生命と国土を護る—30学会からの発信—」において丸山久一副会長が講演・討論を行ったことは記憶に新しいものであります。このフォーラムで災害に強い国づくりの重要性や国土保全の観点から、コンクリート構造物に対しても今日の課題と今後の方向性が示されたことは本学会にとって非常に重要なことで、「コンクリート技士・主任技士」や「コンクリート診断士」の位置づけが明確になったものと考えられます。

 我が国では、団塊の世代が60歳以上になったため、これからは現状より多くの国家予算を社会保障費等に振り向けざるを得ない状況にあり、長期的には新規の建設投資は減少傾向になると考えられます。事実、我が国のセメント生産量は既にピーク時の約半分となっており、お隣の中国の生産量は日本の10倍以上です。このような状沢下、いかにして我が国のコンクリート分野の活動を活性化していくかが重要なこととなっています。

 今回の震災による被害状況を見る限り、耐震補強の施されたコンクリート構造物は軽微な損傷で済んだものが多く、「コンクリート」で造られた多くの構造物は市民の安全を確保する上で非常に有用であり、津波から避難された人々の救助にも重要な役割を果たしていることを世間に示すことができたものと確信しています。つまり、コンクリート構造物は防災・減災に対して非常に役立ったと考えています。

 しかし、我が国では、昨年12月に発生したトンネル内の剥落事故の例からも分かるように、既設の構造物は建設後長期間経過したものが多くなりつつあるため、これらの構造物の適切な維持管理が不可欠な状況にあります。ところが、公共投資も既に半減され、このままでは今までのように便利に利用できる構造物が著しく減少していくことは明らかです。次の時代を担っていく若者の負担を少しでも減らすためにも、また国民の安全を確保し、安心して住める国土を市民に提供するためにも、学会としてコンクリート構造物の重要性を社会に働きかけると同時に、目前の少子高齢化時代に対処するための経済的・技術的な諸問題の解決を図ることが必要であると考えています。幸い、今年は本学会が主催するコンクリートサステナビリティに関する国際会議ICCS13と建設材料技術に関する国際会議SCMT3が開催されます。このような場を利用してコンクリート構造物の重要性を世界に訴えることも重要であると考えております。

 私たち「日本コンクリート工学会」は、会員の皆様とともにコンクリート工学およびコンクリート技術を通して、東日本大震災からの復旧・復興と安全・安心な社会基盤の整備に尽力していく所存であります。

うおもと・たけと
(独)土木研究所 理事長

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