開会に際して,本委員会委員長で司会の西山峰広准教授(京都大)より挨拶があった。アメリカの雑誌(SCIENTIFIC
AMERICAN)によると,『プレストレストコンクリートは20世紀の建築の大進歩の1つとして認められており,鋼鉄の時代からプレストレストコンクリートに時代は移りつつある』と記述されている。が,よくよく調べてみると50年前の雑誌だった。さて,50年後の現在どうなっているだろうか。土木での認知度は高いが建築では相変わらずである。どうしたら建築でも普及できるかが今回のテーマのひとつである。
第1部ではPC技術の現状として3名の講演が行われた。
塩原等准教授(東京大)よりBCSの共同研究『構造安全性と生産合理性の融合を目指した鉄筋コンクリート造事務所ビル建築の開発』が紹介された。事務所=鉄骨造の数式が蔓延している技術体系の脆弱性を打開すべく,軽い床・大きなスパン・解体回収の容易性・地震時のフレームとスラブの損傷制御をキーワードに制震ダンパー付きアンボンドPC圧着工法による事務所建築の開発を行った。
菅田昌宏委員(竹中工務店)より中塚佶教授(大阪工業大)が提唱している『PCリ・ブロックシステム建築』が紹介された。部材のリユースを実現するためにPC技術を利用する。無筋のPCaブロックをプレストレスによりつなぎ,プレストレスを解除することにより解体リユースする。構造および施工性確認実験により技術的には実現できる道筋は出来ている。
春日昭夫委員(三井住友建設)より『橋梁における複合構造』が紹介された。プレストレスを用いたハイブリッド橋の分類と国内外の施工事例について紹介された。ハイブリッド橋は重量の軽減と軽快なデザイン性が特徴である。波形ウェブ橋,複合トラス橋,スペーストラス橋などの特徴と時代変遷が紹介された。
第2部では8名のパネラーにより,建築のPCを取り巻く環境・コスト情勢・大学でのPC教育の問題と,土木の耐久性・落橋事故に始まったグラウト管理手法の見直しに関する話題提供が行われ,引き続きフロアを交えた意見交換が行われた。「耐久性を考えればPCは決して高くはない」「大学で少しでもPCの知識を与えるべき」「現場ではPCを一度施工するとファンになる」といった声が挙がった。
記録:福井剛(ピーエス三菱) |