「骨材の品質と有効利用」に関するシンポジウム         -概要の報告- 1. 日時 2005年12月9日(金)10:00から17:00 2. 会場 (社)日本コンクリート工学協会 11F会議室 3. シンポジウム全体の概要  本研究員会では,骨材の品質と有効利用に関するシンポジウムを開催し,骨材にかかわる最近の研究成果を集め, 議論を深めることにより,最新技術の実用化の情報を委員会活動に反映させることとしました。  当日は,下記プログラムに記すとおり,骨材の製造,低品質の骨材,骨材品質とコンクリートの品質の関係, 異種骨材の混合使用,骨材微粉の有効活用など,多岐にわたる内容の研究発表が行われ,参加者との活発な討議が 行われました。骨材製造からその使用に至るまでの課題点,現状が多くの参加者の共通認識となったものと思われ ます。  また,本シンポジウムは,当日の参加申込を含むと,計152名の非常に多数の参加を得ました。骨材の問題に対 する関心の深さと,今,骨材の研究を進めることの必要性/重要性を痛感した次第です。  当日は会場が手狭となり,ご不便をおかけしたことをお詫びいたしますが,同時に,今後の骨材製造およびその 使用に対する関心の深さを再認識した次第である。 4. プログラム 総合司会:十河茂幸(大林組) 4-1 委員長挨拶 國府勝郎(首都大学東京) 4-2 セッションI:骨材の製造技術と品質,座長:近松竜一(大林組) (1)粒形・粒度の優れたコンクリート細骨材の製造に原材料の岩質が及ぼす影響,谷澤陽介(高松高専) (2)細骨材用研磨砕砂の品質評価,田畑美紀(山口大学) (3)建設発生土を原料とする加工砂の品質,古井 博(広島地区生コン協同組合協同試験場) (4)骨材品質の改良技術における現状の課題改善効果,賀谷隆人(コトブキ技研工業) 4-3 セッションII:低品質骨材の研究動向・実態調査,座長:野口貴文(東京大学) (5)骨材の低品質化とコンクリートの性質に関する研究動向,阿部道彦(工学院大学) (6)関東地区におけるレディーミクストコンクリート工場の骨材に関する実態調査,須藤絵美(内山アドバンス) (7)低品質細骨材がコンクリートのフレッシュ性状,強度および耐久性に与える影響,片平 博(土木研究所) 4-4 セッションIII:骨材の品質とコンクリートの性能,座長:久田 真(東北大学) (8)骨材の粒度構成がフレッシュコンクリートの変形特性に及ぼす影響,近松竜一(大林組) (9)骨材の粒度分布が変化することによるフレッシュコンクリートの状態,田村哲也(小川工業) (10)骨材粒度の分離が配合に及ぼす影響について,吉兼 亨(宇部生コンクリート) (11)細骨材の吸水率等がコンクリートの硬化後の性能に及ぼす影響,麓 隆行(大阪市立大学) 4-5 セッションIV:骨材の混合使用,座長:河野広隆(土木研究所) (12)3成分の混合砂の調合によるセメントモルタルの基礎的特性に関する研究,韓 千求(清洲大学) (13)砕砂やスラグ細骨材の一部にフライアッシュを置換することによるコンクリートの品質向上,加地貴(四国総合研究所) (14)スラグ骨材の高密度コンクリートへの有効利用,五味信治(りんかい日産建設) (15)混合骨材コンクリートの諸特性に関する実験的検討,佐伯竜彦(新潟大学) 4-6 セッションV:骨材微粉の有効利用,座長:棚野博之(建築研究所) (16)微粉材料の適正な混和率の設定方法について,三宅淳一(電源開発) (17)砕砂および高炉スラグ細骨材を用いたコンクリートの配合設計に関する研究,石橋昌史(九州大学) (18)石灰岩骨材の微粉分量がコンクリートのフレッシュ性状に与える影響,中村秀三(太平洋セメント) (19)砂当量試験方法に関する一検討,山之内康一郎(全生連) 4-7 委員会中間報告・閉会挨拶,上野 敦(首都大学東京),十河茂幸(大林組) 5. 各論文/討議の概要(ダイジェスト,論文番号は4.プログラムと同じです。) ★セッションI (1)粒形・粒度の優れたコンクリート細骨材の製造に原材料の岩質が及ぼす影響,谷澤陽介(高松高専) 粒形・粒度の優れたコンクリート用細骨材に関する研究で,高速回転するチェーンの打撃エネルギーにより骨材を破砕し 角張り部を除去する装置を用い,原材料の岩質が製造された細骨材の粒形や粒度に及ぼす影響について報告があった。 (2)細骨材用研磨砕砂の品質評価,田畑美紀(山口大学) 砕砂の表面を研磨することによる表面粗さと粒子形状の改善効果について報告された。細骨材の物理的性質として粒度や 粒形以外に粒子の粗さも重要な要因であり,モルタルの流動性を大きく左右することが示された。なお,研磨方法によっ て流動性の改善効果が得られない場合もあり,試験の再現性や精度に多少疑問があるとの指摘もあった。 (3)建設発生土を原料とする加工砂の品質,古井 博(広島地区生コン協同組合協同試験場) 広島地区の骨材事情の現況や建設発生土を原料として湿式砕砂設備で加工した砂の品質改善について報告された。第3種や 第4種の建設発生土を原料とした場合にアスファルト合材や粘性土が混入し品質が変動したものの,適切な対策を講じた結果, コンクリート用細骨材の品質規格に適合する細骨材が製造できることが示された。 (4)骨材品質の改良技術における現状の課題改善効果,賀谷隆人(コトブキ技研工業) 回転式遠心破塊装置による骨材の品質改善効果を圧縮破砕機と打撃破砕機を用いた場合と比較するとともに,これらの骨材を 用いたコンクリートの品質や微石粉の混入の影響について報告がなされた。回転式遠心破塊装置を用いることで形状の改善に 加えて,破砕時のクラックが減少し表面も滑らかになり,天然砂と70%程度置換しても同等の品質が得られることが示された。 また,微石粉を20%程度置換してもコンクリートの品質には悪影響を及ぼさないとの報告があった。 *骨材製造技術全般に関する質問として,目標(理想)とする物理的性質(粒形や粒度など)を明示してほしい旨要望があった。 ★セッションII (5)骨材の低品質化とコンクリートの性質に関する研究動向,阿部道彦(工学院大学) 物理的な品質の劣る骨材を低品質骨材とし,その品質および骨材品質とコンクリートの強度,弾性係数,乾燥収縮および耐久性 指数の関係について,1980年前後の調査・研究について報告が行われた。報告では,はじめに,わが国における骨材種類の変遷と これにともなうJASS5の変遷が紹介された。そして,日本建築学会,土木学会,日本コンクリート工学協会,セメント協会,土木 研究所などの調査結果を交えながら,骨材品質の変化とコンクリートの品質に対する影響が説明された。 (6)関東地区におけるレディーミクストコンクリート工場の骨材に関する実態調査,須藤絵美(内山アドバンス) 関東地区のレディーミクスト工場(200工場)を対象として実施した,使用骨材の品質およびアルカリ骨材反応抑制対策手法に関するアン ケート調査の結果について報告が行われた。回答数は120であり,骨材品質についてのアンケートおよびASR抑制対策に関するアンケート 両方に回答した工場は83である。近隣の関東8都県からの骨材購入がほとんどであること,細骨材を混合して使用している工場が約7割で あること,高性能AE減水剤を使用する場合は呼び強度が変化しても単位水量を一定としている工場が多いこと,ASR抑制対策としては総量 規制が最も多いことなどが報告された。 (7)低品質細骨材がコンンクリートのフレッシュ性状,強度および耐久性に与える影響,片平 博(土木研究所) 岩種および風化程度の異なる低品質骨材を収集し,低品質な細骨材および粗骨材がコンクリートのフレッシュ性状,強度,長さ変化,凍結 融解抵抗性に及ぼす影響について報告が行われた。フレッシュコンクリートの品質に対しては,細骨材の影響が粗骨材と比較して大きいこと, 圧縮強度に対しては細骨材・粗骨材ともに影響を及ぼすこと,凍結融解抵抗性に対しては,粗骨材の影響が大きいことなどが説明された。 また,低品質の骨材は一般に流通していないため,掘削ズリや河床堆積物を使用しているが,これらの入手でも困難をともなうことが報告された。 ★セッションIII (8)骨材の粒度構成がフレッシュコンクリートの変形特性に及ぼす影響,近松竜一(大林組) 振動締固め時のコンクリートの変形特性を示す「モビリティー」特性に影響を与える骨材の粒度構成の影響についての紹介が なされた。その結果,粒径5-2.5mmの範囲の細骨材が少ない方がワーカブルなコンクリートとなり,粒径10-5mmの範囲の 粗骨材の割合はフレッシュコンクリートのコンシステンシーに大きく影響を及ぼすことが示された。 (9)骨材の粒度分布が変化することによるフレッシュコンクリートの状態,田村哲也(小川工業) 粗骨材の粒度分布を調整したコンクリートについて,フレッシュ性状と圧縮強度を試験した。その結果,同一の粗粒率(FM) であってもその粒度構成は多岐にわたり,コンクリートのフレッシュ性状や圧縮強度に影響が出るため,粗骨材の製造サイトに おいては,分割貯蔵などで骨材粒度をいかにコントロールするかが重要であるかが示された。 (10)骨材粒度の分離が配合に及ぼす影響について,吉兼 亨(宇部生コンクリート) 骨材製造時における粒度分布の変動の実態を基に,この変動がコンクリート製造時の配合やスランプの調整に与える影響を明ら かにした。また,単位水量の管理においては,骨材製造時における粒度分布の変動が大きく関係しているため,粒度の分離防止 がきわめて重要であることを示唆した。 (11)細骨材の吸水率等がコンクリートの硬化後の性能に及ぼす影響,麓 隆行(大阪市立大学) 各種細骨材の吸水率の違いがモルタルおよびコンクリートの硬化後の強度および耐久性に及ぼす影響についての検討を行なった。 その結果,コンクリートの強度,乾燥収縮ひずみおよび中性化深さは細骨材の吸水率の違いの影響を受け,これらはコンクリート 1m3中の総水量(単位総水量)と単位セメント量との比によって整理することが可能であることを明らかにした。 ★セッションIV (12)3成分の混合砂の調合によるセメントモルタルの基礎的特性に関する研究,韓 千求(清洲大学) 天然細骨材、砕砂、再生細骨材を種々の割合でブレンドした場合のモルタルの特性について紹介があった。モルタルフロー、 圧縮強度、曲げ強度、乾燥収縮などの特性は、日本での同種の研究で得られた結果と同じ傾向を示すようである。 (13)砕砂やスラグ細骨材の一部にフライアッシュを置換することによるコンクリートの品質向上,加地貴(四国総合研究所) 砕砂と銅スラグ細骨材を使用したコンクリートで、細骨材の一部をフライアッシュで置換した品質向上効果について報告がな された。フライアッシュを適当な割合で砂置換することにより、単位水量の低減、ブリーディングの低減、長期材齢での圧縮 強度向上、乾燥収縮の低減などの効果があることが判明した。 (14)スラグ骨材の高密度コンクリートへの有効利用,五味信治(りんかい日産建設) 銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ粗骨材を使用した高密度コンクリートついて報告がなされた。高性能AE減水剤と石灰石 微粉末を併用することにより、ブリーディングを抑えながら適切な施工性が得られることが示された。 (15)混合骨材コンクリートの諸特性に関する実験的検討,佐伯竜彦(新潟大学) 低品質骨材、再生骨材、スラグ骨材などをブレンドしたコンクリートの品質についての検討結果が紹介された。各種の実験結果 が報告されると同時に、それらの事前予測がコンクリートのモデル化による数値計算で可能なことが示された。 ★セッションV (16)微粉材料の適正な混和率の設定方法について,三宅淳一(電源開発) 石灰石粉やフライアッシュなどの微粉材料を用いたコンシステンシーの改善方法について、余剰ペースト理論とその検証実験を もとに報告があった。モルタルの余剰水膜厚に対する微粉材料と細骨材の面積体積平均粒径の比(δ/d)を指標とすることにより、 モルタルのコンシステンシーを評価することが可能であることが示唆された。 (17)砕砂および高炉スラグ細骨材を用いたコンクリートの配合設計に関する研究,石橋昌史(九州大学) 砕砂や高炉スラグ細骨材を用いたコンクリート配合の改善方法について、最適細骨材率と粒径判定実積率および微粒分量との 関係をもとに報告があった。これらを適正に用いることによりコンクリートの圧縮強度や中性化抵抗性、長さ変化率などは、 粒形に優れる海砂を用いた場合と同程度の性能を有することが示唆された。 (18)石灰岩骨材の微粉分量がコンクリートのフレッシュ性状に与える影響,中村秀三(太平洋セメント) 石灰石微粉末を用いたコンクリート配合の改善方法について、実積率と粒度分布をもとに報告があった。各種のモルタル実験結 果より、微粒分量についてはJIS規格上限値の7%以上、粒度分布では中間粒度を少なくすることがワーカビリティーを改善する 上で有効であることが示唆された。 (19)砂当量試験方法に関する一検討,山之内康一郎(全生連) JISA1801に規定される砂当量試験方法の判定基準値や試験方法の改善について、凝集剤の使用方法をもとに報告があった。各種 の実験結果より、指標となるSE値は85%程度であるとともに、無機系の凝集剤を用いることにより試験精度を保持したまま大幅 な試験時間の短縮が図れることが示唆された。 ー以上ー