日本コンクリート会議設立趣意書
近年、世界各国においてあらゆる種類の建設工事が活発に行われしかもこの工事は年々増加の一途をたどり、地球の容ぼうは絶えずつくり変えられております。この建設工事に用いられるコンクリートおよび鉄筋コンクリートの量はぼう大なものであり、建設材料のうち最も重要なものであると申しても過言ではないと思われます。わが国を例にとってもコンクリートおよび鉄筋コンクリート工事は極めて盛んであって世界的に大規模なものおよび独自な工法によるものを多数誇っており、コンクリートの使用量とならんで主要材料のセメントの生産量は世界の第3 位であり、品質も世界屈指のものであります。また鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリート、鉄骨鉄筋コンクリートなどに使用する鋼材の品質および生産量も世界的に有数なものであります。
このように重要なコンクリートとその材料について、世界各国で日夜極めて多数の人がその研究と応用に従事しているのは言うまでもないことでありますが、不思議にこれをまとめるための国際機関は今までできていないのであります。なるほどAmerican Concrete Institute(ACI), Comite Europeen du Beton(CEB), Federation Internationalede la Precontrainte(FIP), International Union of Testing and Research Laboratories for Materials and Structures(RILEM)あるいは国際大ダム会議コンクリート分科会などがあって、地域別または項目別にはかなり国際的な活動が従来から行われておりますがコンクリートに関連してその材料から設計、施工の全般を網羅した国際機構が無く、いわば大きな「穴」がありました。
一方、わが国を見ますと、他の多くの国と異なり、分野によって違い、現在の世界の姿に似て各学協会その他の官公庁団体でそれぞれコンクリートを独自の立場で扱っており、各種規格や規準も不統一であると言う状況であります。
この状況を憂い1963年土木学会および日本建築学会コンクリート連合委員会を組織し、両学会のコンクリートおよび鉄筋コンクリートの標準示方書や仕様書、設計基準などの統一、その他コンクリートに関連する共通の問題を処理しようと動きはじめておりますが、日なお浅くコンクリート全般の統一からは未だ程遠い有様であると言うほかはありません。
この時にあたって世界各国でコンクリート全分野に関連した国際的機構を組織しようとする機運が濃厚となり、過日わが国に対してもACIあるいはCEB などからその呼びかけがありました。その国際機構の構想についての詳細はこれから決定されるもので未だ定まってはおりませんが、少なくとも各国単位の既存のコンクリート関係の機関を1つ選んでその国の代表とすることは確定的なようであります。
統一組織のないために、わが国がこの国際機構(仮称International Federation of Concrete Organization)に参加できないとなれば重大問題であります。この際是非わが国コンクリートおよび関係材料に関連のある学協会、諸官公庁あるいは諸団体や専門家の協力を得て、国際組織にはむしろ積極的に加わって主導的な加盟国の一つになりたいと思います。また、ACI、CEBなどからもわが国がそのような役割を果たすのを期待されております。
このような事情にありますのでコンクリート、鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート製品および諸材料にいたるまでのわが国の関係学協会、諸官公庁、諸団体、専門家などを構成員とする「日本コンクリート会議」を設立して国内の連絡を図り、国際コンクリート機構の設立運営に寄与し、内外のコンクリート知識、技術の向上に貢献せんとする次第であります。
昭和40年6 月
発起人一同